広島原子爆弾の爆心地から約1.1kmの木造家屋内で、女性は被爆した。被爆して、約2週間後頃から、脱毛が始まった。原子爆弾から放出される放射線によって、毛根の根布が、一時的に損傷されて発症した。脱毛は通常は、被爆後の約2週間で始まるが、約4〜5日後の早期に発症事例例もあった。2ヵ月以後まで生存被爆者では、毛髪の再生が始まった。
原子爆弾による急性放射線障害の症状の一つに脱毛がある。原爆投下して炸裂後に数日から数週間の間に、高線量の被爆者は、発熱、吐き気、嘔吐、食欲不振、血性下痢、脱毛、紫斑または点状出血、喉や口の中のただれである鼻咽頭潰瘍、歯の周りの歯肉の崩壊と潰瘍である壊死性歯肉炎を発症する。症状の発現時期は様々であるが、重度被爆ほど早期に発症する。約200Rad以上を被爆すると脱毛が発症する。頭皮以外の脱毛は非常にまれであった。1970年に長崎市に在住した被爆者9,910人を、原爆による急性症状と脱毛の有無とその後28年間の死因との関連性は、脱毛があった被爆者は、脱毛がなかった被爆者に比較して、癌による死亡率が高かった。
脱毛する髪の毛は、毛包や毛球に内在する細胞群が産生するタンパク質で形成される。細胞群は、放射線や毒性化学物質、癌の化学療法剤などで毛包が萎縮して細胞障害される。脱毛部では、毛髪の母細胞である毛母基、内毛根鞘、外毛根鞘がより重度に傷害された。脱毛の発現率は、爆心地からの被爆距離に相関して、近距離ほど高頻度に発症した。髪の毛は細くなり、櫛でとかすと簡単に切断されて、脱毛が発症する。毛包や毛球の細胞群は、他の細胞よりも、約23時間から約72時間ごとに繁に分裂するので、損傷を受ける。組織の損傷は、放射線への曝露後の組織内の分子の化学的性質の変化に発症する。放射線による損傷の主な原因は、放射線が水分子をフリーラジカル化の変化に起因した。
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