ベトナム戦争で散布された枯葉剤に含まれるダイオキシンの影響による胎児の病理標本には、先天性障害が発生していた。ベトナムのTu Do病院だけでも100体以上のベトナム戦争による枯葉剤の影響を受けた奇形児の標本が残っていた(2013年)。微量のダイオキシンで、細胞質内の受容から遺伝子の特定部分と結合し、腫瘍、奇形、免疫、発育の異常などが起こる。
ベトナム戦争でアメリカ軍が枯葉剤を使用した。1962~71年に南ベトナム解放民族戦線と北ベトナム軍の勢力が潜伏する森林地帯を枯らせて,農作物を腐らすために、爆撃機を低空飛行して散布した。2,3,7,8-テトラクロロジベンゾパラジオキシン(2,3,7,8-TCDD)のダイオキシンが含まれて少量でも猛毒である。散布された約5000万トンの枯葉剤にはダイオキシンが約170kgも含まれた。1970年代以降に,枯葉剤を吸入あるいは接触してベトナム人に、流産,皮膚疾患,癌,先天性欠損症,先天性奇形と後遺症が異常に高い頻度で発生した。ベトナムで長期に枯葉剤に関与した多数のアメリカ軍,オーストラリア軍およびニュージーランド軍兵士に癌その他の被爆障害が発生した。アメリカ軍の退役軍人らはアメリカ軍向けに枯葉剤を生産した農薬メーカー7社に集団訴訟を起こし、約25万人の被害者と家族のために1億8000万ドルの補償基金が設立された。しかし、アメリカ政府は枯葉剤と先天性障害の因果関係を全く認めていない。
1967年2月6日にベトナム戦争中のアメリカ軍は、ランチハンド作戦で、南ベトナム解放民族戦線が潜む森林を消失させ、食糧生産を阻止するため、枯葉剤の大規模な散布をした。2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)と(2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5-T)の混合剤であった。農業用の除草剤を化学兵器に転用して、ベトナムの森林の約2割が壊滅した。約3000万人以上のベトナム人が被害を受けた。不純物の猛毒のダイオキシン類の一種2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-1,4-ジオキシン (TCDD)が、奇形や腫瘍などの発生の原因になり、国際世論の非難を浴びて、1971年に散布を中止した。ベトナムではこの作戦以後に、結合双生児、無脳症児など障害児の出産が約20万人にも達した。枯葉剤は帰還した兵士にも被害を出し、ベトナムでは3世代を経過しても障害が続いている。
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